27℃で半透膜で仕切った断面積1.00cm2のU字管を準備し、左に1.0gのデンプンを入れた溶液100ml、右に蒸留水を注ぎました。
その後、しばらく放置したところ、液面差が10.0cmになりました。デンプンの分子量を求めてください。
ただし、気体定数R=8.31×103(Pa・L/K・mol)、水溶液の密度1.0(g/cm3)、水銀の密度を13.6(g/cm3)とします。
溶媒から溶液に水が浸透し、左側が高くなって右側が低くなり、液面差が10.0cmになって止まりました。これは浸透してこようとする圧力(浸透圧)と水溶液10.0cm分の重さによる圧力が釣り合ったためです。
①水が浸透する圧力 = ②10.0cmの溶液柱の圧力
この式を作ってみましょう。
①水が浸透する圧力
液面差が10.0cmなので、増えた液面は5.0cm分になります。断面は1.00cm2なので、増えた体積は次のようになります。
5.0cm×1.00cm2 = 5.0cm3 = 5.0ml
よって、浸透後の体積は…
100ml + 5ml = 105ml
浸透圧の式により、浸透後の溶液の浸透圧は次のようになります。
ΠV = nRT
Π × 0.105L = 1.0g/M(分子量) × 8.3×103 × 300K
②10.0cmの溶液柱の圧力
圧力はパスカルPaの他にg/cm2でも表すことができます。まずは、溶液中の圧力をg/cm2で表しましょう。
溶液中の密度は1.00g/cm3、高さは10.0cmであることから…
1.00g/cm3×10.0cm = 10.0g/cm2
続いて、g/cm2をPaに直しましょう。水銀柱760mmは密度が13.6g/cm3なので圧力g/cm2は次のように表せます。
13.6g/cm3 × 76.0cm = 1034g/cm2
水銀柱760mmは1.01×105Pa(1033.6g/cm2)なので、ここから溶液柱の圧力を求めます。
1.01×105Pa × 10.0g/cm2 / 1034g/cm2 = 976.8Pa
③計算する
①の式に②の値を代入しましょう。
Π × 0.105L = 1.0g/M(分子量) × 8.3×103 × 300K …①
Π = 976.8Pa …②
①に⓶を代入すると…
976.8Pa × 0.105L = 1.0g/M(分子量) × 8.3×103 × 300K
M = 2.4×104
浸透が起こる前と起こった後での「水が浸透しようとする圧力」(浸透圧)は、水溶液の濃度が変わるため値が異なります。
浸透後は、溶液中の重さと釣り合っているのは、浸透が起こった後の浸透圧(最初よりも小さい浸透圧)なので、体積が増えた状態の「水が浸透しようとする圧力」を使用します。
しかし、浸透圧とは厳密には液面差をなくすために加えられる圧力であり、浸透が起こる前の体積で求められる値が「浸透圧」です。
この溶液の「浸透圧」を求めよと言われたら、体積が変化する前の状態で求める必要があります。