反応させただけだと混合物ができる
酢酸エチルはエタノールと酢酸を硫酸で脱水することで得られます。
生成した酢酸エチルを分離する際には次のような手順を踏みます。
- エタノールと酢酸を硫酸で脱水し酢酸エチルを合成。ここには未反応の酢酸やエタノールなどが含まれている。
- 反応液をビーカーに取り、冷水を加えて2層に分離し、上層だけを分液漏斗に入れる。
- 分液漏斗にジエチルエーテルと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて、良く振りまぜて水層を捨てる。
- 残ったエーテル層に塩化カルシウム水溶液を加えて、水層を捨てる。
- 粒上の無水塩化カルシウムを加えて一晩放置する。
- 濾過した後、ゆっくり熱してジエチルエーテルを蒸発させ、75~78℃付近で分留すると酢酸エチルが取り出せる。
手順3,4,5で加えられた物質にはどのような役割があるのでしょうか。
炭酸水素ナトリウム水溶液の役割
未反応の残った酢酸を取り除くのに使われます。酢酸は二量体となって無極性分子のように振る舞っており、エーテル層に溶け込んでいます。
炭酸水素ナトリウムを加えると、弱酸の遊離反応によって酢酸ナトリウムとなって水層へと移動します。
CH3COOH + NaHCO3 → CH3COONa + H2O + CO2
塩化カルシウム水溶液の役割
未反応の残ったエタノールを除去するのに使われます。エタノールとCaCl2はCaCl2・6C2H5OHという分子化合物を生成します。この反応は吸着反応と呼びます。この分子化合物は水溶性なので水層へ移動します。
CaCl2 + 6C2H5OH → CaCl2 ・6C2H5OH
吸着反応とは?
塩化カルシウムは吸湿性があり水と反応して水和物を作ります。これは、塩化カルシウムの電荷に水が引き寄せられて吸着するためです。これを吸着反応と呼びます。
エタノールのヒドロキシ基も同じ仕組みで塩化カルシウムに吸着反応します。
無水塩化カルシウム(固体)の役割
乾燥剤としての役割を持っています。ジエチルエーテル中に含まれる水分を水和水として塩化カルシウムに結合させます。
どれも不要物を取り除くのに使われるんだね。