医薬品としての化学物質
ある種の化学物質は医薬品として用いられている。医薬品には薬理作用があるが、主作用以外にも副作用を引き起こすものもある。
例えば、アセチルサリチル酸は解熱・鎮痛作用を持つ医薬品ではあるが、副作用として胃を痛める働きがある。そのため、アセチルサリチル酸が含まれる薬には、同時に胃薬も配合されている。
様々な医薬品
高校化学で知っておくべき薬理作用を持つ化学物質は、アセチルサリチル酸、ニトログリセリン、炭酸水素ナトリウム、グリセリンである。
アセチルサリチル酸:痛みを増幅する物質を合成する酵素の働きを阻害するため、解熱・鎮痛作用がある。
ニトログリセリン:ニトログリセリンが分解されてNOとなり、NOは血管を拡張する働きを持つ。そのため、血管拡張作用を持ち、狭心症など血管が細まる症状に対して処方される。
炭酸水素ナトリウム:胃酸に含まれる塩化水素を中和する製酸作用がある。
サリチル酸メチル:消炎作用を持ち、湿布として用いられる。
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アセトアミノフェン:視床と大脳皮質の痛覚閾値の上昇により、熱を下げ、痛みを緩和する。
グリセリン:水分子と水素結合を形成しやすく、保湿作用がある。
化学療法薬
薬理作用ではなく、体内に侵入した病原菌を除去するために用いられる化学物質を化学療法薬と呼ぶ。サルファ剤、抗生剤などがある。サルファ剤は生物由来ではないため抗生物質とは呼ばれない。
サルファ剤が持つ構造は、病原菌の発育を阻害する。
サルファ剤は葉酸生合成系のうちジヒドロプテロイン酸合成酵素(英語版)の基質であるパラアミノ安息香酸 (PABA 下画像) に構造的に類似しており、競争阻害物質としてジヒドロプテロイン酸合成を阻害する。
ヒトは葉酸合成する経路をそもそも持たないため、サルファ剤による影響はなく、無害である。
抗生物質
微生物の活動を阻止する物質の総称を抗生物質と呼ぶ。微生物が生産する点が、サルファ剤とは異なる。ペニシリンなどの物質がある。
耐性菌とは
一時期、抗生物質を病院で過剰に投与する時代があったが、現代ではできるだけ抗生物質は投与しない方針となっている。それは、細菌類の突然変異によって、抗生物質に耐性を持つ生物種が出現してきたためである。抗生物質を与えれば与えるほど、細菌類にとっては自然淘汰が働き、進化が起こりやすい環境となる。
対症療法薬とは
化学療法薬とは違い、病原菌等の大元を除去するのではなく、症状を緩和するために用いられる薬を対症療法薬と呼ぶ。前述した、アセチルサリチル酸、サリチル酸メチル、アセトアミノフェンなどがある。