濃硫酸が脱水性を持つ仕組み
濃硫酸H2SO4は脱水性を持つ物質として知られています。そもそもなぜ濃硫酸は脱水性を持っているのでしょうか。
濃硫酸は強酸なので、H+を放出する力がものすごく強い物質です。酸はH2OにH+を押し付けることで放出することができます。
H+ + H2O → H3O+
酸はH2OがないとH+を出すことができないのがポイント
濃硫酸は濃度が95~98%の濃度なので、殆ど水が含まれていません。そのため、殆どの硫酸分子が電離できていない状態にあります。
その結果、濃硫酸は水分子でなくても、-OH基などのH+を受け取りそうなところにH+を押し付けてしまいます(下画像はエタノールと硫酸)。
するとH+はOに配位結合します。するとOは+の電荷を帯び、隣から電子を引き寄せて水 H2O として脱離します。
つまり、濃硫酸が脱水性を持っているのはH2Oがいない環境でめちゃくちゃフラストレーションがたまって所かまわずH+を押し付けるためなのです。
なぜ濃塩酸・濃硝酸は脱水性を持っていないの?
濃塩酸・濃硝酸は脱水性を持っていません。これはそれぞれの濃度が原因です。
塩酸も硝酸も揮発性の物質のため、濃い濃度の溶液を作ろうと思ってもどんどん揮発してしまいます。そのため、硫酸のような濃い溶液を作ることができません。
濃塩酸の濃度は40%、濃硝酸の濃度は60%ほどです。濃硫酸の98%に比べると全然薄いです。
濃塩酸や濃硝酸には水がたっぷり含まれており、ある程度電離することができています。そのため、硫酸のように誰構わずにH+を押し付けるというような力はないのです。
塩酸も硝酸も揮発性があるから硫酸みたいに濃い溶液を作ることができないんだね。