有機化合物のそれぞれの性質を利用して、様々な物質が溶けた液体からある特定の有機化合物を抽出することが可能である。そのためには次の性質を理解しておく必要があるだろう。
酸性の強さ
塩酸、硫酸、スルホン酸>カルボン酸>炭酸>フェノール
塩基性の強さ
NaOH>アミン
呈色反応
アミン:さらし粉水溶液で赤紫色に呈色
フェノール:FeCl3水溶液で青紫色に呈色
サリチル酸:FeCl3水溶液で赤紫色に呈色
溶解
ジエチルエーテル:全ての有機化合物を溶解する。
塩酸:アミン←塩基性なので中和反応
NaOH:カルボン酸、スルホン酸、フェノール類←酸性なので中和反応
NaHCO3:カルボン酸、スルホン酸←フェノールは炭酸より弱酸なので含まれない
実験で確かめよう
目的
有機化合物(ニトロベンゼン、アニリン、サリチル酸)を混合しジエチルエーテルに溶解したものを分離・抽出する。
準備
ニトロベンゼン、アニリン、サリチル酸、ジエチルエーテル、2mol/l HCl、2mol/l NaOH、さらし粉、塩化鉄(Ⅲ)水溶液
分液漏斗、試験管
実験方法
- ジエチルエーテル20mlを分液漏斗に入れ、ニトロベンゼン1ml、アニリン1ml、サリチル酸0.1gを加えてよく混ぜる。
- 分液漏斗に2mol/l HCl 6mlを加えて、よく振って静置し、コックを開いて下層部を試験管Aに分離する。
- 試験管Aに2mol/l NaOH 6mlを加えてよく降る。上層の遊離した液体をピペットで採取し、蒸発皿にう移す。その後、蒸発皿にさらし粉0.1gを加えて変化を観察する。
- 分液漏斗の残りの液体に2mol/l NaOH 5mlを加えて、下層を試験管Bに分離する。
- 試験管 Bに2mol/l HCl 7mlを加え、変化を観察する。
- 試験官Bに塩化鉄(Ⅲ) 水溶液を加えて変化を観察する。
結論
- 手順1では有機化合物がエーテルに溶解する。
- 手順2では塩基性であるアニリンがHClと塩を作り、水(下層部)に溶ける。
- 手順3では 強塩基NaOHを加えることによって弱塩基であるアニリンが遊離する(上層)。採取し、さらし粉を加えると赤紫色の呈色反応が見られる。
- 手順4では、酸であるサリチル酸がNaOHと塩を作り、水(下層部)に溶ける。
- 手順5では強酸であるHClを加えることによって、弱酸であるサリチル酸が遊離する。
- 手順6では塩化鉄とサリチル酸が反応し、赤紫色の呈色反応が見られる。