銀鏡反応はアンモニア性硝酸銀でなきゃだめ
アルデヒドには還元性があります。アルデヒドはアンモニア性硝酸銀と反応し、銀イオンを還元して銀が析出します。これを銀鏡反応と呼びます。
[Ag(NH3)2]+ + e– → Ag↓ + 2NH3
アルデヒドはただの硝酸銀水溶液とは反応しなく、アンモニア性硝酸銀でなければ反応しません。これはアルデヒドの還元性はアルカリ性の条件下でないと発揮されないことに原因があります。
アルデヒドの還元性の仕組み
アルデヒドの還元作用はOH–がアルデヒド基のCを攻撃することによって始まります。アルデヒド基のCはOの強い電気陰性度によって+に帯電しており、OH–を引き寄せます。
さらに、Hが酸化剤によってH-(水素アニオン)として引き抜かれ、これが酸化剤の物質に電子を渡す(つまり還元させる)役割を持ちます。
このようにアルデヒドの還元性は塩基性条件下で発揮されるものなのです。そのため、ただの硝酸銀水溶液にアルデヒドを加えても還元性は示しません。
塩基性にするのなら、なんでわざわざアンモニアを使う必要があるんだろう?
銀イオンは塩基性下では沈殿してしまう
アルデヒドに還元性を発揮させるためには硝酸銀水溶液を塩基性にしなければならないのですが、Ag+は塩基性にすると不溶性のAg2Oを生成し沈殿するという性質を持ちます。そのため、単純に塩基性にするだけではだめです。
塩基性物質であるアンモニアは銀イオンと錯イオンを形成する性質を持ちます。そのため、アンモニアを硝酸銀水溶液に加えることで、液性は塩基性になりますが、銀をイオンの状態で維持することができます。
その結果、アンモニア性硝酸銀の中でアルデヒドは強い還元性を持ち、銀イオンを銀に還元することができるのです。
わざわざアンモニア性硝酸銀を使うのには、塩基性条件下で銀イオンが存在できるようにするためだったんだね。