化学のなぜ?を集めました

硫酸や塩酸は酸化力がないのに、なぜ硝酸は酸化力があるの?

酸の力と酸化力は全く別物

酸化力とは電子を奪う力(電子を得て還元する力)のことを言います。硫酸H2SO4塩酸HClには酸化力はありませんが、硝酸HNO3には酸化力があります。

なぜこの違いが生まれるのか見ていきましょう。

塩酸HClの場合

塩酸の酸化数を調べてみると、Hが+1、Clが-1です。プラスの値が大きいほど電子を失っている状態で、電子を奪う力が強いです。酸化数の大きい原子は存在しないですね。よって酸化力はありません。

硫酸H2SO4の場合

硫酸はS原子が酸化数+6と、かなり大きい値を示します。酸化力を持ちそう…なのですが持ちません。酸化力を持つかどうかは酸化数の数だけでなく、還元反応の際にどれだけ安定化を受けられるかが重要になります。

実際に実験で還元前と後でエネルギー差を調べたデータがあるのですが、硫酸の場合にはその差はそこまで大きくありませんでした。つまり、今が安定しているため、還元してもさらに強く安定しないのです。そのため、酸化力を持たないのです。

硝酸 HNO3 の場合

硝酸のN原子の酸化数は+5と、かなり大きい値です。また、硝酸の還元前後ではかなりのエネルギー差があることがわかっています。硝酸は還元した方がより安定する物質になれるため、酸化力を持ちます。

熱濃硫酸は?

ちなみに、ただの硫酸では酸化力はありませんが、熱濃硫酸は酸化力を持ちます。熱濃硫酸は硫酸が分解してSO3が発生します。SO3はS原子が酸化数+6なのに加えて、とても不安定な物質で還元した方が安定するので酸化力を持ちます。

酸化数が多い原子があるかどうかと、還元した方が安定するかどうかが酸化力の有無を決めるんだね

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