不動態を形成する金属たち
不動態を形成する金属として、鉄Fe、ニッケルNi、アルミニウムAl、クロムCr、コバルトCoが知られています。高校化学の教科書では「希硝酸とは反応するが、濃硝酸とは酸化被膜を形成して反応しない」とあります。
アルミニウムと濃硝酸の反応を見てみましょう。
2Al + 6HNO3 → Al2O3 + 6NO2 + 3H2O
希硝酸との反応では、塩(Al(NO3)3)が生じます。しかし、濃硝酸との反応では酸化物Al2O3が生じ、これが反応をストップさせます。
不動態は強い酸化力で一瞬で全体に酸化被膜が形成されることで作られます。希硝酸は酸化力はありますが、濃度が薄いために酸化被膜を素早く作ることができず、反応が進みます。
濃硫酸・熱濃硫酸とは反応するの?
教科書には「希硝酸・濃硝酸」についての記述はあるのですが、濃硫酸・熱濃硫酸についての記述はありません。濃硫酸・熱濃硫酸とは反応するのでしょうか?
まずは濃硫酸から考えてみましょう。普通、濃硫酸は「酸化力がある」とは書かれませんが、下の映像では銅と酸化剤として反応しているばかりか、鉄と不動態を形成しています。
この実験結果だけ見ると、濃硫酸は十分に酸化力があると言え、また不動態を形成します。
続いて熱濃硫酸について考えてみましょう。
濃硫酸は熱することで、三酸化硫黄SO3と水H2Oに分解します。そのSO3が強い酸化性を示すため、熱濃硫酸には強い酸化作用があります。
H2SO4 → SO3 + H2O
熱濃硫酸は十分な濃度と強い酸化力を持つので、不動態を形成させます。
濃硝酸、濃硫酸、熱濃硫酸はFe、Ni、Al、Cr、Coと不動態を形成し反応しません。濃硝酸・熱濃硫酸については納得できるのですが、濃硫酸が本当にそんな酸化力持ってるか?という疑問は残ったままです…。