弱酸は濃度が高い時には電離度が低いですが、濃度が薄くなると電離度が高くなります。これはなぜでしょう。
平衡定数から考えてみましょう。
酢酸は水溶液中では次のような平衡状態(左右に行き来している状態)にあります。
CH3COOH ⇔ CH3COO– + H+
平衡状態にある反応は、次のような式で平衡定数Kを求めることができます。平衡定数Kは温度が変わらないならば一定の値をとります。
$$K=\frac{[CH3COO^-][H^+]}{[CH3COOH]}$$
CH3COOH の濃度をa、 CH3COO– と H+ の濃度をbとしてみましょう。溶液は1Lとします。
CH3COOH | CH3COO– | H+ |
a mol/L | b mol/L | b mol/L |
先ほどの式にあてはめると、次のようになります。
$$K=\frac{[CH3COO^-][H^+]}{[CH3COOH]} = \frac{b × b}{a} = \frac{b^2}{a}$$
続いてこの溶液を希釈して体積をVLにしてみます。電離度が変わらなければ濃度が次のようになるはずです。
CH3COOH | CH3COO– | H+ |
a/V mol/L | b/V mol/L | b/V mol/L |
これを平衡定数の式に当てはめてみます。
$$K’=\frac{[CH3COO^-][H^+]}{[CH3COOH]} = \frac{\frac{b}{V}\frac{b}{V}}{\frac{a}{V}} = \frac{b^2}{Va}$$
電離度が変化しなければ平衡定数の値は1/V倍になります。しかし、平衡定数は温度が変わらなければ一定の値を取るはずです。
そのため、元の値に戻ることができるようbの値が大きくなります。つまり、電離度が大きくなり反応は右に傾きます。
CH3COOH ⇔ CH3COO– + H+
平衡定数から考えてみると納得できるね。